これってどうなの?

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穂積 著 「式の前日」淡々とした日常の裏で豊かに流れる感情

本屋で平積みされ、なんだかイチオシ!の扱いを受けていたので気になりました。
短編集なのだけど、収録されてるすべての話が染みます。


人間の喜びや切なさ、言葉にはしない愛情といったものを描き出すのが上手い作家さんで、巷の口コミなどもそのあたりが絶賛されてることが多いです。

個人的にはタイトルにもなった「式の前日」や、一緒には暮らしていない父と娘のひとときを描いた「あずさ2号で再会」、ラストの「それから」などの、物語序盤でミスリードを誘い、ラストで遠回しに真実を明かす手法が好きでした。


しかも明かされる真実も決して悪いことや不幸なことではない上に、そこまでの台詞がより深い意味を持ってくる構成は確かに二度三度と読み返したくなります。


特に「あずさ2号…」のお父さん、金髪で派手な柄シャツ、いかにもなヤンチャ系の見た目をしてるのですが、そして多分本当にそういう人だったのでしょうが、娘がお父さんのところに遊びに行こうかと言った時の「絶対 ダメ」という台詞は、ラストを知った後もう一度読むと彼の娘への愛情とか後悔とか寂しさとか色んなものがぶわっと滲み出て来ます。


もし自分があのお父さんの立場になったら、やっぱりダメって言うんだろうなあ…とじわっと来ました。


あと余談ですが猫が可愛いかった…草